学校裏サイト問題の本質は「いじめ」問題であることを、ほとんどの人が認識していない

どうも最近「学校裏サイト」の話題が白熱しているが、多くの人は「学校裏サイト」なるものが「パケット定額」等におされて突然現れてきた物だと勘違いしている。そんな馬鹿な。*1
学校裏サイトは突然出てきた訳ではない。まず最初に起こったのは、インターネット上に生徒のコミュニティが出来てきたこと、だ。つまり現実世界における生徒達のコミュニティが、携帯電話の普及やら何やらでインターネット上にも延長するようになったのである。つまり彼らは「仲良しグループ」をそのまま移植させた形のウェブサイトを作り、そこにある掲示板で、学校で行われている日常会話を自宅でも楽しんだのである。
いじめというのは突発的に起こる。なぜだか分からないけど起こる。だからいじめ問題というのは解決が難しいし、長い間社会問題になっている。現実社会におけるコミュニティがインターネット上に延長されるようになったということは、現実で起きたいじめはネット上のそれにも飛び火する。こうして、現実でのいじめに呼応する形で、健全なインターネット上のコミュニティサイトが裏サイト化するのである。学校裏サイトというのは突然ひょいと現れるのではなく、普通の掲示板なり共同日記なりが現実のいじめに呼応する形で徐々に裏化していくのである。
また、現実のコミュニティがインターネット上に延長している、つまり彼らにとってのインターネットは現実の延長線上として機能している以上、インターネットからいじめが発生するということも十分に考えられる。特にインターネット上でのコミュニケーションというのはそこに書かれた文字しか情報がなく、そのためしばしば暴力性を伴ってしまうため、それが些細なけんかに繋がりやすい。些細なけんかというのはちょっとしたことですぐいじめに繋がってしまうので、そうやって「インターネット上の暴力性を伴った文字情報がいじめを引き起こす」といったことは十分に考えられる。つまり、「インターネット発のいじめ」がたけのこのように出てくるわけである。
しかし、いずれにせよ大切なことは、学校裏サイトの問題というのはそれ単独で論じるべき問題ではなく、常に現実のいじめ問題とセットになっていることである。インターネット発にせよ現実発にせよ、いじめがインターネットだけで行われるということはまずなくて、ほとんどの場合は現実でもいじめが起こっている。「インターネット上でのみいじめられている」なんていうことが起こっているような錯覚を覚えてしまうのは、ネット上におけるいじめはいじめの内容が文字情報としてそこに記録されているからだ。現実のいじめというのは非常に陰湿になっていて、誰がどこでいじめをしているのか、全く分からない場合も多くて、「これ、本当にいじめ?」というケースが多いのだけれど、ネットの場合「とりあえずいじめられているらしい」ということはすぐに分かる。この点が、「学校裏サイト問題はいじめ問題とはまた別」という認識を呼んでいるのだろう。
だからこそ、「学校裏サイトは見つけたら閉鎖に追い込むのが一番いい」などと間抜けなことを抜かしている学校教師・自称専門家は今すぐ反省するべきだ。背後にはいじめ問題があり、そのいじめ問題を根絶しなくては「学校裏サイト」問題はなくならない。逆に背後にあるいじめ問題を見つけられないままサイトを閉鎖に追い込むことは、現実におけるいじめを発見する絶好のチャンスを逃すことにつながるばかりか、サイトのさらなる「裏化」を招くだけだ。また子供から携帯を奪うことに関しても、彼をそのコミュニティから孤立させてしまう可能性があるので、考えものである。必要なのは「コミュニティサイトが裏化したら、速やかに現実において火種を見つける」ということであって、インターネット上だけで対処しようとするのは完全に間違っている。

この問題はどうも従来のいじめ問題と別個のものだととらえられがちだけれど、そんなことはない。生徒にとって、携帯の中に広がるインターネットというのは、まさに学校の延長線上であって、学校裏サイトの問題は必ず現実のいじめ問題とリンクしているのである*2。この問題を論じている技術者・専門家は直ちにそのことを頭に入れるべきであり、ここに技術的・人文的視点を統一した総合的視点が要請されている。もちろん、はてなを普段から見ているような人間はこんなこともとから分かっているとは思うが、専門家を称する文系学者の中には「ネットで起こっていることは技術屋の範疇であり、自分たちの庭とは何ら関係ない」と思っている人間がいて、そういった趣旨で書かれた記事(URLは挙げないが、「裏サイトは見つけたらつぶす」「裏サイトにはアクセスできないようにする」等の解決法を挙げた記事)は非常に多いのが現実だ。

なお、わいせつ画像が云々とか、そういうのだって元々は生徒達同士が仲間うちでエロ本を交換していたみたいなのがデジタル化されただけ。「女の子が裸をアップ」とかは、「学校裏サイト」で行われていることではなくて、「ガキが集まるサイト」で行われていること。「学校裏サイト」の定義自体があやふやになっていることにも注意をしたい。ここでは「同じ学校に所属している生徒達が集まって特定の生徒をいじめているサイト」とした。でないと学校裏サイトじゃないでしょ。

*1:追記:昼間のワイドショーなどで、子供達に及ぶ危険と称してこういった問題がよく扱われている。一度ニートになって見るべし。

*2:もちろんインターネット上にのみある独自のコミュニティもある。でもそこから酷いいじめが始まるということはない。なにせコミュニティへの出入りが頻繁にあるので、いじめなんてしている余裕はないし、いじめの対象はさっとそのコミュニティから退ける。現実ではそうはいかない。